人生は、楽しいストーリーにしたもの勝ちだ

レベル1から始める人生劇場、行きまーす!

ある島の食卓(15分、お題『とてつもない母』)

「お母さん?」
 いつもなら起こしに来るウザったい声が、今日に限って聞こえなかった。時計を見ると午前8時13分、全速力で用意しても校門に滑り込めるギリギリラインの時間。普段はここまで寝てたらたたき起こされてお小言20分コース、むしろそれが遅刻の原因なんですがってツッコミ入れたくなる時間。

なのに、母が今日は起こしに来ない。
逆に心配になって、一階に向けて呼びかけてみた。

「お母さん?」

母は遅刻にはうるさい。待ちぼうけにトラウマがあるらしく、自分の時計の針が約束時刻の12の文字を回ろうものならアカデミー賞か顔芸大賞優勝かってほどの形相になる。般若の面だっけ?能で出てくるあのお面、あれが裸足で逃げ出すぐらいの顔だ。あの仮面、髪の毛が整ってるだけまだマシだよね。お母さんは髪の毛まで ボッサボサだからね。肌真っ赤だし腕のイボも増えてきてるし。

呼びかけに返事がないもんだから、一階を探し回ってみる。リビングには何も変わらない黒曜石のテーブル、バスケットに盛られたニワトリの丸焼き、爆ぜる焚火、特に変わった様子はない。この間の小競り合いで使った鉈もそのまんまだ。そういえばこの丸焼き、ニワトリじゃなくてキジか。かたき討ちとか言いながら飛んできたんだよね。一羽だけで無謀な挑戦だったよねぇあれは。

「……ああ」

ふっと思い当たる。もしかして、残党狩りでもしてるのかな。この間の侵略もどきは本当数が少なすぎて困ったもんなぁ。選ばれし者だとかなんだとか、そんなのこっちにはどうでもいい話、どうせ攻めてくるんなら団体で来てほしいんだよね。侵略者は貴重なタンパク源だし。

時計を見たら午前8時20分。さすがにこれはまずい。母探しは中断し、顔を洗って持ち物チェック。うん、棍棒の手入れはOK。トゲに欠けもないし、これなら今日の実技で思う存分暴れられるな。最近船が通りかかるっていうし、デビューに備えて特訓しないとね。

ふー、と息を吐いて、家を出る。

「あ」

目の前にはちょうど帰ってきた母。いつもよりも赤い顔……ああ、返り血だね。いいにおいがする……人間の血だ。やっぱり残党狩りか。かかってる量といい、満足そうな顔といい、うまくいったのかな。

予想は的中。目が合うと、母が牙を見せながら、ニヤっと笑う。
「口ほどにもなかったね、桃太郎って奴も」