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【メディアグランプリ投稿作品】混ぜるな危険(お見合い編)

こちらは天狼院書店の【メディアグランプリ】投稿作品です。

メディアグランプリ - 天狼院書店

予選を通過すると掲載されます。前回は〆切破りしたので今回こそ は……!

 

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『混ぜるな危険(お見合い編)』

 

「愛ちゃん、結婚する気はある? お見合いしたい気持ちにはなっているかしら」

母からのLINEに刻まれた、実に5年ぶりの『お見合い』の文字に懐かしささえ覚える昼下がり。とっくの昔に自分が結婚した年齢を通り過ぎた上、3年ほど付き合った彼氏と別れた私を心配してくれているのだろう。以前『子供が結婚したのを見届けて初めて子育てが完結する』とか言ってたから、えーかげんにせーやってのもあるかもしれない。多分ある。母の年齢的に孫がいてもまったくおかしくないし、実際母の友人のほとんどには孫がいる。孫の顔を見たいという気持ちも分かるし、孫育ての体力があるうちにというのも分かるし、見せられてなくてごめんねという気持ちもある。

 

 あるんだけどさ。

 

 ちょっと考えて欲しいのだ、母よ。

 あなたの娘さん、アフロヘアーと七三黒縁メガネという『混ぜるな危険』のハイブリッドなんですよ?

 

 父と母はお見合い結婚だ。なんでも、叔父同士が同じ職場で、それぞれ残っている親戚がいるからお見合いをさせようという流れだったらしい。よくある話。母自身、30になる前に結婚したいという願望があり、父は父で国家資格試験に没頭中でお付き合いどころの話ではなかったのでちょうどよかったのだろう。それは分かる。

 分かるんだが、問題はその当時の父の外見と母の外見だ。父は資格試験中で見た目にこだわるという思考がなく、バリバリの七三分けに、最近のメガネ屋さんのシャレオツフレームとは次元が違うフォルムのぶっとい黒縁メガネだった。もちろん七三スタイルはディカプリオではなく中井貴一系だ。昭和の話だから今とはセンスが違うのかもしれないが、イケメンでもそれは許されないだろうってレベルのガリ勉スタイル。対する母はジャズシンガーとしてキャバレーを回っており、具志堅用高ばりのアフロヘアーをしていた。

 黒縁メガネの中井貴一系男性×具志堅用高ヘアーの女性。何をどう考えたらその二人を引き合わせようと思えるのか不思議で仕方ない。国家試験勉強中×ジャズシンガーの組み合わせも異次元だが、見た目の組み合わせも異次元過ぎる。相性そっちのけで、とにかく結婚していない同士を引き合わせる義務を果たさねばならない的な力が働いたとしか思えない。初対面の姿なんて、イメージトレーニングにぴったりだ。スーツに身を包みカッチリキッチリポマードで固めた七三分けスタイルに黒縁メガネの男性と当時はオシャレとは次元が違う扱いだっただろうアフロヘアーの女性が向き合い、緊張の面持ちで食事をしている光景……ギャグ漫画家だってこの構図は思いつけまい。教授というお堅い職業の叔父同士が一体どんな顔をして二人を引き合わせたのか、想像するだけで笑いがこみ上げてくる。

 

 しかしまあ、うまくいってしまったのだ。どう考えても『混ぜるな危険』としか思えない組み合わせが、半年のお付き合いを経て結婚してしまったのである。

 父は母に対し『はじめて会ったとき、宇宙人だと思った』と言っている。性格以前に見た目でそう思ったんじゃなかろうか。母は母で父が出会ったときに七三分け黒縁メガネだったことをネタにしているが、娘二人から言わせてもらえばどっこいどっこいだ。別ベクトルに突き抜けすぎだ。

 

 そんなお見合いを経て幸せになった我が両親。当然というかなんというか、結婚しない娘たちにお見合いというルートを構築してきた。

 まずは私。23歳で当時付き合っていた彼氏と別れてから5年ぐらい彼氏なしだったのを見かねて、お見合い話をどんどん持ってきてくれた。母経由から親戚経由、母の知り合い経由まで色々。私自身、自分で出会いを探すのは苦手だし、両親がお見合いで幸せになったんだし……と、最初のほうこそ期待があった。

 

 しかしながら、結果は六連敗。会った人は悪い人ではなかったものの、セオリーどおりに3回デートをしてもときめくことなく、そのまま自然消滅。お互いに燃え上がることはまったくなく、友達としてという道すら生まれなかった。一回や二回ならともかく、六連続となるとさすがにイヤになってしまい、母の結婚年齢を超えたこともあり、お見合いブームは一旦幕を閉じた。その後彼氏ができたものの、結婚という気にはなれず、3年の付き合いを経てフリーへと舞い戻って今に至る。その間のお見合いプロジェクト対象者には妹が選ばれていたが、彼女は彼女で彼氏とあれこれあったので成果は芳しくなかった。

 

 そんなわけで、お見合いリベンジルートの入り口に立たされている私なのだが……

 

 やっぱり思うのだ。

 どうせお見合いするなら、父と母のような『混ぜるな危険』がいいと。合う合わないとかマッチングを超越した『なぜその二人を組み合わせた』と周りから総ツッコミが入るような出会いをしてみたいと。混ぜるな危険から生まれた子どもが混ぜるな危険を求めるのは性なんじゃないか。初対面の6歳年上を相手取り、褒めてるつもりでビジネスモデルを完全論破しドン引きさせてしまうような塩素系漂白剤女子には、落とすべき黄ばみは落とし守るべき色は守る酸素系漂白剤ぐらいの破壊力を持つ男子が合うのではないか。

 もちろん頭では分かっている。お見合いは安定を求めて行われるものであり、マッドサイエンティストの実験ではないと。何万分の一で起こったであろう両親の奇跡が自分の身にも起こると期待するのはおこがましいと。ついでに言うと年齢的にそろそろヤバイと。

 それでもやっぱり、心のどこかで期待してしまうのだ。エジソンの電球のような『わけが分からん組み合わせなのに大成功』という奇跡を。ネタにしかならない出会いなのに運命感じちゃうような鮮烈なファーストコンタクトを。白馬の王子様でもヒーローでもなく、ビッグバンを引き起こすような出会いを。

 そんなことを思いながら、母に『お見合い歓迎』の返事を返す。次に持ち込まれるお見合い相手が地球外生命体であることを、割と真剣に期待しながら。